戦場カメラマン・渡部陽一さんが人生初の映像作品に挑戦。山形県ものづくりPR動画「ものの婦」を公開

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山形県は、県産品の魅力を伝えるPR映像として、山形県のものづくりを支える女性職人たちをテーマに描いた動画「ものの婦」を公開した。

動画タイトルの「ものの婦」は、山形県の「ものづくり」の現場で、日々情熱を持って、ひたむきに戦い続ける女性職人を現代社会における「武士(もののふ)」と捉え、創作した造語。

「ものの婦」をコンセプトとする今回の動画では、戦場カメラマンの渡部陽一さんが、キャリア初の映像作品制作に挑戦。動画全体を監修する総監督だけでなく、ムービー撮影、スチール撮影、インタビュアー、題字、ナレーションも担当した。

被写体ギリギリまで近付き、被写体との会話をベースとしたジャーナリスト特有の撮影スタイルを通じて映し出されるのは、現場の息遣いが伝わってくるような臨場感、作り手の思いが詰まったこだわりの製作過程、女性職人ならではの優しく包み込むような温かい人柄、そして丁寧かつ繊細な手作業が織りなす作品の数々となっている。

■渡部陽一さん インタビュー
――映像監督のオファーが届いた時、率直にどう思いましたか?

「カメラマンとして世界中を回れば回るほど、ニッポンのことを知りたいと思うようになったんです。故郷の静岡県は、温暖な気候で、ほとんど雪も降りません。だから、いつか雪国の女性たちの地に足がついた日々の暮らしや慣習に触れてみたいという気持ちは、ずっと抱いていました。そうした中で今回、山形を取材する機会をいただき、そこで出会った人々の温かさや、他人のことを思い寄り添う愛情や、おもてなしや暮らしに向き合う厳しい姿勢、技の継承を目の当たりにして、もうとりこになりましたね。カメラマンとして自分自身がこれからどう向き合っていくべきなのか、初心というものやカメラマンとしての姿勢を整えてもらえた気がします」。

――普段のスチール写真ではなく、ビデオカメラでの映像撮影はいかがでしたか?

「スチールは瞬間的な切り口を一気に捉え上げていきますが、映像はカメラのレンズが自分の裸眼とリンクしているんだという感触を得ましたね。見たものをそのまま捉えて、時間や空間が自分の感覚とつながっていく。そんな一体感がありました。両肩と首にかけた3台のカメラを、ワイド、ロング、ミドルで使い分ける戦場報道の現場では、基本的にレンズ交換はしません。でも、今回はレンズ交換をすることで、瞬発的な時間に追われるのではなく、まるで職人さんたちの身内になったかのように、その人のリズムや気持ちをじっくりと見て、捉えて行くことができる。これが映像の醍醐味なんだと感じました」。

――山形の「ものの婦」を実際に撮影して、どんなことが印象に残っていますか?

「一番は目の動きですね。最初、カメラを脇に置いて話し出すと、優しいお母さんの目になるんです。でも、いざカメラを回し出すと、職人さんの目になる。僕は個人的に接近型の撮影が好きなんですけど、目を撮影する中で気付いたのは、一点に集中しつつも、わずか1センチぐらいの瞳の中で、カチャカチャ細かくフォーカスが動いているんですよ。その目の動きに、どの職人さんのお話の中でも出ていた、山形の『ものの婦』がその地で継承してきた、作ったものを使う人への“気配り”というキーワードが現れている気がしました」。

――「ものの婦」をインタビューするシーンは、どんな思いで臨みましたか?

「職人さんを何よりもリスペクトするのは、毎日コツコツ何十年もかけて磨き続けた技を、そこに根付かせていくことなんですね。そういう自分が決断した道をぶれずに極めていく気持ちというものは、一体どこから生まれてきて、今も整え、保っているのか。継続の力、不動の力を知りたいと、職種を問わず感じていました。お話する中で、山形の「ものの婦」は厳しさもあり、職人として向き合って行く考え方も根付いていると感じましたが、特に印象に残っているのは、私はモノを作りたかった、という非常にシンプルな言葉です。モノを作りたいから、私はここで暮らして、家族の時間を大切にしていると。僕だけでなく、日本のどの地域の方も、日常の中で本当に大切なことってなんだろう、大切にしたいと思っていることってなんだろうって考えることがあると思います。そんな不安を取り払い、温かい期待を抱かせる魅力が、山形にはたくさんあると感じました」。

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