貴乃花親方が遺した基準が今後の大相撲を変える

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日本相撲協会を揺るがした、貴乃花親方の戦いが終わりました。29日の理事会では契約解除という事態こそ免れたものの、最下級に相当する「年寄」への降格が決まり、今年頭までついていた「理事」から数えると都合5階級の降格。平成の大横綱、一時は協会のナンバー3の地位にいた貴乃花親方は「ヒラ」までその地位を下げました。

やはり、相撲協会を飛び出して生きていくのは難しい身でありながら、協会と真っ向戦うのは無理がありました。弟子の貴公俊の暴行のように、ひとつの失着があれば、たちまち立場はなくなり、村八分のようにして責め立てられます。もっと多くの味方を作り、政治力によってことを運べなかった不器用さは、この改革を成し遂げるチカラを欠いていました。

ただ、決して貴乃花親方の行動は無駄ではありませんでした。

とにもかくにも暴力はダメであるという頑なさは、行動として残りました。弟子が被害者となった暴力に対しては徹底抗戦の構えで臨み、弟子が加害者となった暴力に対しては平身低頭して謝罪を続けました。協会の内部の論理では勤務態度であったり協調性の不足による降格処分ということであったとしても、世間はそうは受け止めません。平成の大横綱は「暴力」への対応によって疎まれ、弟子の「暴力」によってヒラまで落ちた、そのような視線が今後は角界に向けられるのです。

貴公俊の暴力事件の直後に、それまでの態度を翻してメディアの前に立ち、ことの次第を語った貴乃花親方のスピード感あるふるまいが今後のスタンダードとなります。同じスピード感で、同じようにことの次第を明かせなかった場合、それはすなわち「隠ぺい」という扱いになるでしょう。貴乃花親方は自身の転落と引き換えに、日本相撲協会における「隠ぺいか否か」の基準を厳格なものとしたのです。

貴乃花親方の戦いのなかで、次々に明らかになった過去の暴力事件、そして現在進行形の暴力事件。まだまだ角界にはそうした事例が数多くあり、今後も起きることでしょう。もし、ことが起きたなら、素早くそれを協会に報告し、同時に世間に報告し、厳正な対処をしなければ「隠ぺい体質」とみなされる、それが貴乃花親方が遺した「基準」です。日本相撲協会は、これまでよりも極めて厳しい新たな基準のもとで、暴力の根絶に尽力しなければいけないのです。

年寄総会では強い言葉で追及した親方もいるといいますが、その言葉はすべて自分に返ってくるものです。今後、世間は貴乃花親方の「基準」で大相撲を見ていきます。貴乃花親方が日本相撲協会からは離れて生きることはできないように、大相撲も世間に受け入れられずして存続していくことはできません。くれぐれも「世間」という組織に対して、ふてくされたり、頑なな態度であったりしないよう、襟を正してもらいたいものです。

真の敵は「暴力」であり、貴乃花親方ではないのですから。

・文=フモフモ編集長

(引用元:livedoor news)

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