混乱するスポーツクライミング五輪選考、日本側に勝機はあるか?

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東京五輪で金メダルの期待を集める新種目が揺れています。11月1日、日本国内でのスポーツクライミング競技を統括する日本山岳・スポーツクライミング協会は、国際連盟が選考プロセスに関する「新解釈」を示したことで、選考に混乱をきたしているとして国際連盟を提訴すると発表したのです。

日本側は、国際連盟が定める全3大会の選考会において獲得した出場枠に対して、独自の選考基準に基づいて「誰に推薦を出すか」を決めるつもりでした。陸上などのように「出場資格を持つ多数の選手のなかから、協会が選ぶ」方式をやろうとしたのです。

しかし、今年の2月の日付で公開され、日本側も5月には翻訳して把握していた選考プロセスを読めば、そのような選考方法はできないことが明らかでした。国際連盟は「国・地域」に対して出場枠を与えるのではなく、成績上位の「個人」に対して出場枠を与えると初めから示していたのです。選べる道はその個人が出場するか辞退するかだけで、あとから誰を推薦するか決められるような仕組みではそもそもなかったのです。

本来であれば、この時点で日本側には手の打ちようがないはず。それでもなお国際連盟を提訴し、日本側の代理人も「勝てる可能性はある」とする根拠は何なのか。そこには国際連盟が公表した選考プロセスにおける、「開催国枠」に関する文言の不十分さが挙げられるでしょう。

公表された選考プロセスにおいて、開催国枠は「The Host Country is guaranteed one (1) male and one (1) female athlete, on the condition that the athletes meet the eligibility requirements described under section C of this document and that the athletes participate in at least in one (1) of the events mentioned in section D “Qualification Pathway” of this document.」と定義されています。意図としては「最低保証」です。開催国から最低1名は出場を認めようという。

しかし、他競技での同様の規定において「最低保証」を表現する際には、「if not qualified through any other Criteria.」などと、「ひとつも出場枠を取れなかった場合には」という条件を加えるのが通例。「ひとつも出場枠を取れなかったら、1枠をあげます」という意味にするために。その点でスポーツクライミングの国際連盟が示した選考プロセスには不十分な点があります。文言だけだと、「開催国枠1が保証されている」ことが記されているのみで、最低保証かどうかについては読み取り方次第とも言える表現になっているのです。

もし、この開催国枠が最低保証ではなく、最大出場枠「男女各2名まで」という制限を守りさえすれば、日本に与えられるものであるという話になれば、日本側が意図した選考も可能であるかもしれません。すでに終了した世界選手権において上位入賞を果たし、出場枠を個人として獲得した選手に出場を辞退させることで、日本側の枠が空き、開催国枠として誰を推薦するかを決めることができるかもしれないからです。

ただ、そのような選考が本当に選手・ファンの支持を得られるでしょうか。

現時点で五輪の出場枠を持っているとされる日本の選手は、ほかならぬ世界選手権でライバルを上回ったからこそ出場枠を得ているのです。それを破棄して、もう一度決め直すというのは、「一発勝負」で決着した内容を破棄して、もう一度「一発勝負」をやり直すようなもの。仮にこの提訴において勝利したとしても、混乱は深まるだけではないでしょうか。選手のためにも、いち早い決着が望まれます。

・文=フモフモ編集長

(引用元:livedoor news)