緊急速報で自動発進!仙台市とNTTドコモが共同開催した複数技術を組み合わせた「『完全自動』津波避難広…

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NTTドコモのLTE網で「完全自動」津波避難広報ドローンの実現をめざす!


既報通り、仙台市とNTTドコモでは「仙台市及びNTTドコモによるICTを活用したまちづくりに関する連携協定」を2016年8月に締結しています。これに伴う取り組みの一環として2018年3月19日(月)に震災遺構・仙台市立荒浜小学校を会場とした「ドローンを活用した津波避難広報の実証実験」が実施されました。

これまでにも仙台市とNTTドコモによるドローンを活用した災害対策の実証実験は何度か行われており、2017年2月25日に実施された冬山遭難者の捜索活動を支援する取り組み、2017年6月29日に実施された緊急医薬品を搬送する取り組みなどを紹介してきました。今回も実際に実証実験の現場に参加してきまして取材してきたので、その様子をこれまでと同様に写真を交えてレポートしていきます。


会場となった震災遺構・仙台市立荒浜小学校

被災した姿がありのまま保存された建屋。説明用の展示も

今回実験が行われた場所は震災遺構・仙台市立荒浜小学校で、建物は仙台市の沿岸部に位置しており、東日本大震災では実際に津波の被害にあった場所です。2018年3月現在は「津波の威力・脅威を伝えるシンボル」として“被災した校舎”の姿がありのままに保存されています。

こうした脅威に備えて防災・減災を進めるべく、国家戦略特区に指定されている仙台市ではドローンで撮影した映像を「災害発生時の被災状況確認」や「生活インフラの点検」などに活用することを積極的に検討してきています。


実証実験に使われたNTTドコモのLTEネットワークで制御できるドローン

冒頭で触れた連携協定締結後、仙台市とNTTドコモが共同で公開型の実証実験を行うのはこれが4回目。今回の実験では「ドローンの自動離陸・自動飛行」および「ドローンの遠隔制御と監視」、「ドローンからの避難広報」、「ドローンの航路記録と撮影画像のマッピング」、「ドローンカメラでの人物検知」などの技術実証がテーマとして盛り込まれました。

当日技術実証を始める前にまず説明されたのが「基地局を跨いだ(またいだ)長距離飛行」に関する事前の確認結果。というのも、2017年6月に実施された前回(第3回目)の実証実験でドローンが飛行した距離は往復でも約400m。しかし、今回の実験に盛り込まれた飛行距離は最長で往復約2.2km。前回の5倍以上の長さとなるからです。

ドローンの飛行制御にNTTドコモのLTEネットワークを利用するため、基地局を跨いだ場合に「ドローンが安定して飛行できるか」や「(安全性や通信について)地上に影響が及ばないか」は技術実証においても今後の展望を見据える上においても重要なポイントとなります。

そこで仙台市およびNTTドコモでは2017年10月に非公開ながら事前に別途、実証実験を実施し、NTTドコモのLTEネットワークで飛行制御を行うドローンにて2つの基地局を跨いだ往復6.8kmの飛行が問題なく行えたことを確認。この結果を経て今回の実験にこぎつけたことを報告しました。


Jアラート受信機からのメールをきっかけに自動で離陸するドローン

事前報告の後はさっそく実証実験を開始。実験は技術実証する内容を複数に分けて全4パートで行われました。

第1パートで実施されたのはJアラート受信機からのメールをトリガーとしたドローンの自動離陸および飛行、そしてドローンによる自動音声での避難呼びかけです。

Jアラート受信機から届いた大津波警報メールをきっかけとして、人手を介さずドローンが自動離陸。あらかじめ設定されたルートに沿って自動飛行しつつ、自動音声で地上にいる人に向けて避難を呼びかけます。


メール受信をきっかけとしてドローンは速やかに飛び立っていった

実証実験の環境としてはどうかとは思いますが、当日は天候にも恵まれ、また実験時は風もないドローンを飛ばすには絶好の環境。自動で離陸したドローンは安定した様子で高度を上げ飛び立っていきました。

音声での呼びかけについても、スピーカーから発せられる「訓練、訓練、緊急、緊急、大津波警報発表。巨大な津波の恐れ。避難を指示する。緊急、緊急、大津波警報発表。巨大な津波の恐れ。避難を指示する。こちらは仙台市です。」という内容はきちんと聞き取れるレベルでした。


航路と撮影画像はリアルタイムで伝送・マッピングされていく

第1パートおよび第2パートでは避難広報とあわせて、ドローンの航路記録、ドローンカメラで撮影した映像(写真)のリアルタイム伝送・マッピングも実施。航路記録と画像マッピングは富士通株式会社による技術提供で実現されています。

ドローンの航路と画像マッピングから逃げ遅れた人を見つけ、その情報を用いて続く第2パートの技術実証へとつなげていきます。


帰還したドローン。離陸〜飛行〜着陸と終始安定していた

第1パートではドローンに2台のスマートフォン(スマホ)を積載。このスマホを通じて「ドローンの飛行制御」および「航路と撮影写真の伝送」をNTTドコモのLTEネットワークで行いましたが、こちらも終始問題は起こらず。実証成功となりました。


第2パートは海岸からドローンの姿を見守ることに

第2パートの実証内容は逃げ遅れている人に対してドローンを使った遠隔拠点からの避難呼びかけ。第1パートで記録したドローン航路および画像のマッピング内容から、(海岸にいる)逃げ遅れている人の位置を特定。ピンポイントにドローンを飛ばし、スピーカーを通じて肉声で避難を呼びかけます。

このパートではドローンの飛行制御と呼びかけ音声の送信にNTTドコモのLTEネットワークを利用しています。


海岸から荒浜小学校までは約750m

今回は海岸へ移動し、飛んでくるドローンの姿を地上から見守ることに。海岸の防波堤に登り荒浜小学校へ目を向けると、あらためてかなり距離が離れていることを確認できます。


中央の建物の頭上に見える小さな黒い影がドローン

離陸の合図を受けた後、小学校の上空にドローンの影を確認。こちら側(海岸)に向け、安定した様子でまっすぐ飛んできます。


海岸上空で安定したホバリングを見せるドローン

海岸の上空までたどり着いたドローンはホバリングをしながら音声で避難を呼びかけ。荒浜小学校の敷地内と比べれば明らかに強い風が吹いている海岸部でしたが、こちらでもドローンの飛行やホバリングは安定。おおよそ2分の避難広報をおこなった後、海岸を後にし、荒浜小学校へと帰還していきました。


第3パートで用いられたドローン

第3パートのテーマはドローン搭載カメラを活用した人物検知・画像鮮明化技術の検証。日本電気(NEC)による技術提供で、ドローンが撮影した上空映像から逃げ遅れた人を検知します。

この実験で使われたドローンはこれまでとは異なる機体。このパートのドローン飛行制御には無線LAN(Wi-Fi)で実施。NTTドコモのLTEネットワークは映像の伝送に利用されました。


画面左が撮影映像と人物検知の様子。右はドローン航路と人物検知位置

青枠で人物がロックオンされている

このパートで用いたドローンはAI(人工知能)技術を搭載。「立っている」や「寝ている」など、複数の状態における「人」の姿をディープラーニングで事前学習させてあり、検知精度を高めています。実験中モニターに映し出される映像を確認していても、海岸にいる人の姿は逃さずロックオンできていました。

また当日は天候に恵まれ(良い意味で)活躍の機会がありませんでしたが、雨・雪・霧・暗所・逆光など映像が不鮮明になりがちなシーンでもリアルタイムに画像補正を施し、鮮明化できる技術にも対応しています。


第4パートで用いられた防災行政無線車

最後の実証となった第4パートでは、ドローンによる防災行政無線を用いた避難広報を実施。防災行政無線の受信機をドローンに積載。地上の無線車から届いた防災行政無線の音声データをそのまま再生する形で地上の人に避難を呼びかけます。


ドローンに積載された無線受信機(写真=左)と広報用スピーカー(写真=右)

飛行は荒浜小学校上空でおこなわれた

第4パートは荒浜小学校の上空で実施。ここまでのパート同様、搭載する機材を変えてもドローンの飛行は終始安定。

第4パートでは調整不足により広報音声のボリュームが小さく、地上から聞き取りづらくなるといった課題が露呈。それでも耳を澄ますとドローンから防災行政無線の音声が発せられていることは確認できました。


仙台副市長の伊藤敬幹氏

全4パートの技術実証はひとまずすべて成功。この結果を受けて「これまでの実証実験からより実用に近く、幅を拡げた内容を組み立てたが(実証成功も含め)相当意義のある実験ができたと思う」と語ったのは仙台市副市長の伊藤氏。

実用化の目処を尋ねられたことに対して「今回の実証内容を即実用化することは難しい」としつつも「露呈した技術的な課題を分析し、ブラッシュアップし、組み合わせていくことでドローンが防災・減災に力を発揮していくと考えている」と話しました。

今回実証された技術を組み合わせ、発展させていくことにより、将来的には「離陸・飛行」や「避難広報」、「情報収集・共有」を自動で行う「『完全自動』津波避難広報ドローン」の実現が可能になります。

人では踏み入ることが難しい場所でもドローンなら飛行が可能。またドローンを用いて遠隔拠点からアクションが起こせる環境が整えば、2次災害を予防することにも役立ちます。

これまでの積み重ね、そして今後のさらなる取り組みがどのような形で防災・減災につながっていくのか。引き続き取材を通じてその姿を追い、紹介していくことにします。

記事執筆:そうすけ(まきはら とよかず)

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(引用元:livedoor news)

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