日本を大熱狂させたラグビーワールドカップ。招致が決定した際には多くの不安も抱えながらの大会でしたが、結果としては大成功に終わりました。チケット販売率は99%に達し、ワールドラグビーのボーモント会長は「2009年に日本開催という大胆な決断をしたが、正しかった。これまでのW杯の中でも最も素晴らしい大会の一つになった」というコメントを残すなど、今大会を高く評価しています。日本代表もアイルランド・スコットランドという伝統国からの勝利を挙げ、史上初のベスト8進出を果たすという大きな結果を残しました。テレビ中継の視聴率が40%を超えるなど、まさに日本がラグビーブームに包まれたのです。
この成功を背景に国内のラグビー競技を盛り上げていきたいと考えるのは当然のこと。ラグビー関係者も一様に、国内リーグ戦であるジャパンラグビートップリーグの開幕へ向けて意欲を高めています。前回2015年大会の際は一般向けのチケットが少なく、チケットが売り切れなのにスタンドは空席だらけという事態もあったトップリーグ。今回こそブームをブームで終わらせないと息巻いています。
しかし、このままではその意欲は空回りに終わるでしょう。
これまでも日本代表の大活躍でブームを迎えた競技はありますが、そのブームが国内リーグにも同じ勢いで波及するわけではありません。2011年にワールドカップを制した女子サッカーも国内リーグは2018年度の平均入場者数は1400人ということでかつてのブームはもはや終息していますし、ラグビー競技自身も2015年ワールドカップの翌シーズンはトップリーグの観客動員が大幅に増したものの、翌々シーズン以降は微減に転じています。
それは当然のことで、今大会でラグビーに魅了された新たな「にわかファン」は、日本を代表する最高の選手たちが人生を懸けて世界の強豪と戦うという極上のエンターテインメントに魅了されたのであって、国内リーグ戦に魅了されたわけではないのです。日本代表選手を見たい、あんな試合をまた見たい、と思った人がある程度国内リーグ戦にも流れはするでしょうが、同じ熱量で臨めるはずもなく、実際の試合を見て「落差」を感じることも多いでしょう。
日本代表は日本代表、国内リーグは国内リーグ、別物としてそれぞれを愛してくれるファンを獲得しないといけないのです。
2015年大会と今大会を経て、ラグビーは「4年に1回のスポーツ」になりました。4年に1回は見よう、ワールドカップは見ようという。しかし、次のステップがいきなり「毎週の国内リーグ戦」を盛り上げようというのではあまりに一足飛び過ぎるでしょう。次に目指すべきステップは「1年に1回のスポーツ」です。1年に1回、この日はラグビーのことを思い出すという日を作っていくこと、そしてその日を国内リーグ戦主導で生み出すこと。それが日本代表から国内リーグ戦へと「にわかファン」を移動させ、文化として定着させるための順当なステップのはず。
手をこまねいていれば、「4年に1回」から「1年に1回」に移りかけた「にわかファン」はごく当然の流れとして日本代表戦に流れていきます。そして「1年に1回」も代表戦を見れば十分に満足し、次のワールドカップを待つのです。仕事や遊びはたくさんありますので、1年に1回も見れば十分という人は数多くいます。遊園地や映画館、旅行なども1年に1回程度だったりするように。その「1年に1回」の座を国内リーグ戦が占めていくことで、「1年に1回」の先につづく「月に1回」「毎週1回」への道が見えてくるのです。
2020年1月に開幕を迎えるトップリーグにはある程度の「にわかファン」は集まるでしょう。ただ、その先は少しずつ離れていくでしょう。そのときに「1年に1回くらいは」と国内リーグ戦に引き留めるビッグマッチを用意するのがラグビー界の次なる一手です。ワールドカップほどではないにせよ、国内最高の選手が集い、人生を懸けた真剣勝負をする舞台を。日本代表を入口として国内リーグ戦に向かう「にわかファン」のための次のステップを。
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(引用元:livedoor news)
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