アスノシステム株式会社は2020年12月4日(金)と12月10日(木)の2日間、「会議室.COM」の開設20周年を記念して、「会議HACK!オンラインサミット〜テレワーク時代の新しい働き方〜」を開催した。2日間全8セッション、メインMCによる基調講演や、ゲストによる対談など、盛りだくさんの内容であった。
DAY1は、「ワーケーションは日本に定着するか?」をテーマに、5つのプログラムが開催された。
■リーダーが描いたゴールをメンバーで共有
「地図を持って、外へ出よう!」と題した基調講演に登壇したCRMダイレクト株式会社 代表取締役の横田 伊佐男氏は、国内市場にてマーケティングやCRM部門の責任者を歴任し、数多くの商品やサービスのプロモーション、大手企業へのコンサルティングやマーケティングコーチとして、多くのビジネスマンへ研修や講演活動等幅広く活躍してきた。
横田氏は基調講演の冒頭、あるエピソードを紹介した。雪山で雪崩にあった登山隊が、コンパスなどの器材をすべて失いながらも一枚の地図を手に何とか下山できたという話だ。
その登山隊のリーダーは山の麓で待っていた救助隊に「地図を持って来たから下山できた」と話したのだそう。しかしおかしなことに、その地図は遭難したピレネー山脈のものではなく、1,300キロ離れたアルプス山脈の地図だったのだ。
なぜ、彼らは下山できたのか?
「私はその地図の中にゴールを描いてみんなで共有したからなんじゃないかなと思います」と、横田氏。
登山隊を下山というゴールに導いたリーダーの役割が大きいというのだ。
■オンライン読書会で見えたリーダーが行うゴール設定の重要性
リーダーとしてゴールを設定する重要性を、横田氏は実例を交えて紹介した。
基調講演で紹介された田中克成氏は、数々の講演をプロデュースしている講演プロデューサーだ。田中氏がビジネスを展開しているライブエンターテイメント市場は、2010年から2019年までで市場規模が2倍に膨れ上がっており、その勢いに乗り、田中氏も大きな成功をおさめた。
ところがコロナの影響が直撃したことにより、市場規模は8割減となってしまった。3月の段階で、年内200日を残して企画していた28本の講演はすべてキャンセルになってしまったのだ。ステイホームが叫ばれていた2020年4月9日に、横田氏は本を出版したが、企画していた500名規模の大々的なキャンペーンはすべてキャンセルになってしまったという。
その時、田中氏に相談して行ったのがオンライン読書会だった。「嬉しいことになんと30名も集まってもらい、一人一人と非常に深いコミュニケーションができたのがとても良かった」と、横田氏は当時を振り返る。
オンライン読書会が好評だったことから2020年10月1日に再びオンライン読書会を企画することになったが、参加者は3倍の100名を集めることになった。田中氏は「ビビったらGO、迷ったらGO」という父親の知恵から、100名という目標を立てた。さらに横田氏の本の中には「10x(テンエックス)」というものがあり、これは「目標に0を付けて10倍の目標を描く」というものだ。
結果として、目標は初回30名から一気に1,000名へと大幅にアップされた。
残された期間は2週間しかなかったが、最初の読書会に参加した30名が熱心に1,000名を集めようとしてくれたのだという。最終的に1,300人を超える参加者を集めることができた。
ここで思い出されるのが、雪山で遭難した登山隊の話だ。リーダーはコンパスもない状態で「我々が力を合わせれば、この地図がある限り麓には辿り着けるだろう」と隊員を鼓舞したのだろう。横田氏によれば、これと同様のことがオンライン読書会でも起きたのだというのだ。
「田中さんはリーダーとしての道筋はなかったのだろうけど、ここを目指そうと言った時にそれに続くスタッフ達が熱狂をして、1,000名という言葉にわくわくをしてそこを目指していこうということになったんじゃないかなと思います。」と、横田氏は語った。
■一枚の地図から分かる戦術と戦略
次に横田氏は、一枚の地図を示した。「迷えるリーダーが今すぐ持つべき一枚の未来地図」の書籍に描いた地図で、成功要因を7つに分けて示したものだ。それぞれにどういう要因があって、それに強みを持っている企業などが描かれている。
列挙すると、下記のとおり。
・覚悟(Google)
・分析(Netflix)
・決断(FUJIFILM)
・委任(FUJIFILM・Microsoft)
・自立(Microsoft)
・分解(DeAGOSTINI)
・言語(男はつらいよ)
たとえば、「覚悟」のGoogleでは、「目標に0を足して10倍をやっていく」。Netflixでは、「今の業界から新しい業態に変化するという風な分析の事例」などである。
下段の真ん中にあるDeAGOSTINIでは「目標を分解するという話」で、『男はつらいよ』では「車寅次郎さんが一本の鉛筆をどういう風に価値をつけているかという風なこと」などだ。
読書会が成功した要因は何かということを田中氏に聞いてみたところ、「全部大事だけれども左上の『覚悟』というところ」だそう。
この地図は全部で6マスあるが、上段と下段で大きな違いがある。
上段はリーダーが決める戦略で、下段はスタッフの方々が実現する戦術なのだ。
横田氏はこう続けた。
「戦略と戦術は違います。戦略というものはリーダーが決めるもの。戦術というのはスタッフが自分の考えで具体的にどうしていけばいいかということ」。リーダーというのは地図でいうところの上から下のマスへ入りたがるのだそうだ。
田中氏も「もっと人集めはこうしたらいいんじゃないか」「こういう企画じゃないか」と口出しをしようと思ったのだそう。
しかし、たまたま読書会の数日前に目の手術をして目が少し不自由になってしまい、「リーダーがこういう状態だから、せっかくリーダーが出した目標に対して何とかしていこうじゃないか」とスタッフが動いてくれたらしい。
ここから得られた教訓は次のことだ。リーダーは目標と期限を決め、ある程度大まかな戦略を決めたら下には一切口を出さない。
「この1枚の地図をリーダーが持って、それをスタッフと共有できるか否かで、まだ見えないゴールに対して確実な一歩一歩を踏み出してゴールまでたどり着けるんじゃないかなという風に思います」と、横田氏。
これが雪山の教訓の中から横田氏が編み出した一つの実例になっている。
■一枚の地図を持って外へ出よう。ゴールに対して手段はいくつもある
横田氏は「一枚の地図を持って外に出る」で実際に行っていることを紹介した。
キャンピングトレーラーで全国各地キャンプをしながら仕事をした例や、キャンプ場での書籍の執筆しており、これからは一ヶ月間、雪山にたくさんの仕事を持ち込む予定なのだそう。最新のスマートフォンやWi-Fiを持って雪山からのライブ中継やセミナー、出版社やいろんなクライアントの仕事をするのが今からワクワクして楽しみだと語ってくれた。
また、夏のキャンプ場に一ヶ月ほど「ヨコタ基地」を作って、いろんな方を呼んでビジネスなどの話をしたのだそう。金融マンの友人が来た時には、外でバーベキューをやっているその時にキャンピングカーの中からリモートで何百人の方に対して金融セミナーをしたというエピソードも紹介してくれた。金融のような堅くて小難しい話も、場所を問わない時代になってきたわけだ。
最後に横田氏は、このように語った。
「こういう仕事をして、こういうことを成し遂げるという風なゴールは一つかもしれない。ただそのための手段、働く場所というものはいろいろあるんじゃないかなという風に思います」。
近年、ワーケーションは日本経済の活性化、地方創生、ライフワークバランスの充実の起爆剤になると期待されている。基調講演を通して、場所にも時間にも縛られない新しい働き方の可能性が見えてきた。
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(引用元:livedoor news)