カゴメは、名古屋大学大学院工学研究科・後藤元信教授との共同研究で、トマトに含まれるリコピンは、にんにくやたまねぎ、油と一緒に加熱することで、体内に吸収されやすい構造への変化(トランス体からシス体)が促進されること、またその促進成分の1つが、にんにくやたまねぎを調理することで生成される香り成分「ジアリルジスルフィド」であることを明らかにした。なお、本研究内容は化学工学会第83年会(2018年3月13日(火)〜15日(木)、関西大学)において発表された。
■トマトに含まれるリコピンの構造と変化を解明
様々な研究により、リコピンは「トランス体」よりも「シス体」の方が体内に吸収されやすいことが報告されている。リコピンが体内に吸収されやすくなることで、より一層の健康効果が期待できるわけだ。
これまでの研究により、生トマトに含まれるリコピンは主に「トランス体」として存在するが、油と一緒に加熱することで「トランス体」から「シス体」に変化することが分かっている。
またリコピンの体内への吸収を高める手法として、リコピンの構造を「トランス体」から「シス体」に変化させる以外にも、「加工・加熱」や「乳製品や油との同時摂取」が知られている。
■生活習慣病から守ってくれるリコピン
トマトに含まれる赤い色素であるリコピンは、活性酸素を消去する抗酸化作用などを有することが明らかになっている。体内の活性酸素が増えると、細胞が傷つけられてしまう。つまり増えすぎた活性酸素が細胞にいたずらし、 「体をサビたような状態」にしてしまうわけだ。リコピンはこの活性酸素を消し去って、生活習慣病から私たちの身体を守ってくれる働きをしている。
■研究結果
【本研究の目的】
トマトに含まれる赤い色素であるリコピンは、活性酸素を消去する抗酸化作用などを有することが明らかになっている。リコピンには「トランス体」と「シス体」が存在し、様々な研究により、リコピンは「トランス体」よりも「シス体」の方が体内に吸収されやすいことが報告されている。リコピンが体内に吸収されやすくなることで、より一層の健康効果が期待できる。そこで、同社では名古屋大学との共同研究で、トマトに含まれるリコピンを「トランス体」から「シス体」に変化させる技術を研究してきた。本研究では、様々なメニューでトマトと一緒に使用されている野菜がリコピンのシス体への構造変化に与える影響について比較した。さらにリコピンのシス体への構造変化を促進する成分の解明にも取り組んだ。
【方法と結果】
・野菜がリコピンのシス体への構造変化に与える影響
トマトペーストと各種野菜とオリーブオイルを混合後、80℃のお湯で30分間加熱し、加熱後の総リコピンに占めるシス体含有率をHPLC法にて比較した。その結果、にんにく、またはたまねぎを混合したものは、コントロール(トマトペーストとオリーブオイルのみ)と比較して、統計学的有意にリコピンのシス体への構造変化が促進されることが分かった(図1)。
・リコピンのシス体への構造変化を促進する成分の解明
にんにくやたまねぎに含まれる特徴的な成分として、「含硫化合物」がある。これらがリコピンのシス体への構造変化に影響していると考え、促進成分の検討を進めた。リコピンと候補となる含硫化合物と油脂を混合後、電子レンジで加熱(500W、4分間)し、加熱後の総リコピンに占めるシス体含有率をHPLC法にて比較した。その結果、にんにくやたまねぎを調理することで生成されるジアリルジスルフィドが、最もリコピンのシス体への構造変化を促進することがわかった(図2)。
●名古屋大学大学院工学研究科 後藤教授のコメント
トマト中に含まれる赤い色素であるリコピンの形をトランス体からシス体に変えることで、体内吸収性や抗酸化作用が高まることが一般的に言われています。これまで油と一緒に加熱することでシス体への変換が促進されることが分かっておりましたが、それがトマトと料理の相性が良い、にんにくやたまねぎなどのユリ科野菜と一緒に加熱調理することで、一層シス体リコピンが増えることは、食と健康を考える上で大変興味深いことです。この分野の研究がさらに進展することで、トマト製品のおいしさと機能性の関係性が、よりはっきりと示されるのではないかと期待しています。
【まとめ】
今回の研究で、トマトに含まれるリコピンは油と一緒に加熱するよりも、油に加え、にんにくやたまねぎと一緒に加熱した方が、体内に吸収されやすい「シス体」に変化しやすくなること、また促進成分の1つが、にんにくやたまねぎを調理することで生成される香り成分「ジアリルジスルフィド」であることが明らかになった。この結果から、にんにく・たまねぎ・油を用いたトマトメニューはおいしさだけでなく、リコピンを体内に効率良く取り入れるのに適したメニューであると考えられる。
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(引用元:livedoor news)
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