2019年8月14日、本日から吉野家で新メニュー「特撰すきやき重」が登場する。一部の店舗を除く全国で発売されるが、50万食の限定販売だ。価格は税込で1,000円を切る860円。この新メニューを発売前に試食する機会を得たので紹介しよう。ちなみに吉野家は創業から今年で120周年を迎えるという。
■ぶっちゃけ原価が高いので限定50万食しか出せません
この新メニュー「特選すきやき重」(以下、すきやき重)の特徴は、米国産牛のサーロインを使ったこと。こんな高い部位のお肉を使うのはもちろん吉野屋初である。ちなみに筆者は不勉強で知らなかったが和牛では後述するようにもっとお高いお肉を使ったメニューがあるのだとか・・・。
今回の取材案内には「高級食材」としか書いていなかったので、「うーむ。ついに吉野家も1,000円以上の商品を発売するのか? いやいやでもそれはないな・・・」と思っていたがその通りで、価格は1,000円以下におさえたとのこと。しかしその分、原価率はほかの商品よりも高めなため、50万食限定での発売となる。ぶっちゃけ、それ以上の数提供すると赤字になっちゃうらしい。
ちなみに50万食がどのくらいの期間に到達するのか予想を尋ねてみたところ「だいたい1か月程度で達成できれば」とのこと。しかし、この激ウマメニュー情報がテレビやWeb媒体、口コミなどで拡散し、お客さんが殺到したら、もしかしたらあっという間に終わってしまうかもしれない。
■吉牛でお重メニューを出すのは実は初めてではない
限定メニューにしたのは、採算のこと以外にも理由があるとのこと。実は吉野家は「牛重」(1,500円)という商品を、国会議事堂内の「永田町1丁目店」と「羽田空港国際旅客ターミナル店」で提供している。ただし、ここで使われているのは国産和牛の肩ロース。しかも高価なうえ、流通量が少ないので、さすがに1,500円のメニューを全国展開するのは無理だとのこと。
そこで、探し回った結果、ある程度の量が確保できる米国産牛のサーロインに決まったのだという。ちなみにこの新メニューのプロジェクトが始まったのは実に1年も前からで、そこから試行錯誤を繰り返して、ようやく提供に至ったそうだ。
これが「牛重」
■様々な試行錯誤に実に1年
試行錯誤の過程はいくつもあったという。まずは調理方法だ。焼くことよりも煮ることのほうが現場としてはオペレーション(加減を一定に保つ)しやすい。そこで煮るという方向性に決定。次は牛肉の厚さ。今回のすきやき重は、大きめに切られた4枚の肉がどーんと乗っているのだが、サーロインは脂身も少なくさっぱりとしているので、薄いとパサつくし、厚いとかみにくい。煮すぎてもパサついてしまう。実は結構繊細なのだ。
煮ることについては専用の圧力鍋を導入して解決。厚さは0.1ミリ単位で切って試食して決めたのが1.8ミリという厚さだ。このようにして完成したのがすきやき重というわけだ。
■意外な吉野家豆知識「セパレーター」
ところでお膳全体写真を見て気が付いた人もいるかもしれないが、新すきやき重にはタマゴの黄身と白身を分ける「セパレーター」が添えられている。筆者は不勉強で知らなかったのだが、吉野家にはこの器具が常に用意されていて、店員さんにお願いすれば出てくるのだそう。これまで卵の殻を割ったときに黄身と白身を分けていたため失敗すると殻の欠片が入っってしまい。必死に何度も何度も取り除こうとしてお箸を突っ込んで格闘するハメになるやつ、セパレーターさえあれば、あの心配がいらなくなるのである。
■白身を残さずに美味しくいただくテクニック
このすきやき重の食べ方では白身も含めて美味しくいただく方法があるというので伝授してもらう。セパレターで白身だけを分離し、かき混ぜて泡立たせたら、まずそれをかけてから上に黄身を乗せるのだそう。白身を捨てるのももったいないし、なんとか残さずきれいに食べたいと思っている人は試してみるといいだろう。
この方法はもちろん牛丼でもOKだ。なお、今回お話をお聞きした吉野家の伊東常務によると、牛皿定食でやると、なお一層美味しいらしい。白身を泡立たせてご飯にかけたら、黄身を牛丼の頭(かしら)に乗せて食べるやり方だ。筆者は白身も君も全部かき混ぜて、上からドバーっとかけてしまうのだが、自分なりの食べ方を発見できるかもしれない。
筆者はこんな風にダーーっとかけてしまうのが好き
■吉野家の伊東常務に直撃インタビュー
試食会の場に吉野家の伊東正明常務取締役がいらていたので直接お話を聞いた。
――創業120周年ということもあってすきやき重が作られたそうですね
伊東氏:はい。120周年なんでいい肉を使ったメニューを出したいというのがあって。我々のような全国1200店舗で(食材を)大量に消費する中で、(食材を)大量に確保できて(値段が)高すぎない、でも美味しいお肉を使おうということで、サーロインという(部位を使う)のはほぼ1年前に決まってました。それから食材調達を始めて、ようやく全国に出せる商品としてできあがったというところです。
これがサーロインの肉
――新メニュー開発で苦労されたところは
伊東氏:この商品は、特に苦労しまして・・・。(試食会で筆者が)召し上がっていただいて分かったかと思いますが、赤身が多いお肉です。このお肉、火を入れ過ぎるとパサパサになって美味しくなくなっちゃうんです。これ、本社にあるテストキッチンだったら(自分で調理できるので)何回でも美味しいすきやき重はできます。でも全国(の各店舗で新人からベテランのスタッフ全員)でやろうと思うと大変です。なかなかそうはいかない。このため基本の調理器具から見直して、時間のコントロールが利くような圧力鍋を用意しました。
一番難しかったのは、火入れの再現性ですね。それに、お米と肉とのバランスが一番いいタレを見つけるのにも苦労しました。30種類くらい試しました。そこから絞り込んだわけです。
すきやき重は生肉を普段牛丼でお出ししているタレに漬けて数十秒炊き上げます。これで肉に味を入れて臭みを取り、そのあとご飯の上に乗せてすきやきの割り下をかけます。
――お肉の1.8ミリという厚さは、かみ切るのにも大変優しいです
伊東氏:0.1ミリ単位のものをみんなで試しましたからね。「こんなに違うんだ」と思いました。
――すきやき重はつゆだく気味な気がしたのですが……
伊東氏:今回はお肉に味がすごく入るわけではないので、タレとのバランスを考えてそうしました。ご飯も最後まで食べていただけるように、というつもりだったのですが、今まさに「つゆが多いな」という話をしていたところです(笑)。
――どのようなお客様に食べていただきたいですか
伊東氏:まずは普段から吉野家をご利用いただいているロイヤルユーザーのお客様に、いつもとは違う高級なサーロインをお召し上がりいただきたいというのが一番。次は、赤身が多いので、脂身はちょっと、と避けられる女性のお客様でも召し上がりやすい商品だと思っています。
――価格設定が微妙にいいなと思ったのですが
伊東氏:本体価格で800円を超えないというのにはこだわりました。結果食材原価率が最も高い商品のひとつです。でもこの商品は売上利益を大きく取りに行くというより、吉野家と言えば牛だ、とお客様に知っていただくための商品です。ファンの方に喜んでいただくための商品ですね。
――最後にこの商品に書けるメッセージをお願いします
伊東氏:数量限定ですし、サーロインでこの肉量を使ってこの値段はほぼないと思います。売り切れる前にぜひ! よろしくお願いします。
本日からメニュー展開されるので、この猛暑で夏バテしてしまう前にすきやき重で体力を付けて乗り切るというのもいいだろう。会社帰りの吉飲みで、ちょっと豪勢に行きたいって人は、生ビールをきゅーっとやる前にすきやき重でがっつりお腹を膨らましておくと飲みすぎ防止になるだろう。
世間では、いきなり、突然、気が付けばみたいな「突発的なステーキ」店舗が人気だ。吉野家のライバル松屋もステーキ屋松なんていう競合店舗を試験的に運用しているようだが、吉野家でそうしたメニューを提供するということは、全国1200店舗で同じクオリティで提供する必要があるため、そう簡単には実現できない。筆者はアウトドアが趣味なので車で遠方まで出かけることが多いが、食事を取る際に気が付くと「吉野家でいいか・・・」と吉野家に入っていることがある。それは吉野家がすごく美味しいお店であるからと言うつもりは毛頭ない。
その理由は、全国どの店舗に入ったとしても、そこに同じ味、同じ空気、同じメニューがあるからだ。店舗によってクオリティに差がない安心感があるからだ。その安心感って意外と大事だと思う。
昔、幼稚園に上がったくらいの頃で筆者が覚えている吉野家CMソングのフレーズは「味の吉野家牛丼一筋80年」だった。あれから40年、120周年の吉野家は、筆者が良く知る相変わらずの吉野家であり、それはこれからもそうあり続けるのだと思う。
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(引用元:livedoor news)